2024.02.09
ものもらいについて|結膜炎との違いやうつる可能性、治療用目薬について解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
「ものもらい」とは?
「ものもらい」とは、まぶたの汗腺や脂腺の部分が細菌感染を起こし、急性的に化膿性の炎症を引き起こす状態のことを指します。地域によっては、「めばちこ」や「めいぼ」などとも称されますが、医学的には「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と表現されることが一般的です。
ものもらいが発症すると、まぶたの一部が赤く腫れ上がり、まばたきや軽い圧力で痛みを感じるなどの症状が起こります。さらに病状が進行すると、まぶた全体が腫れ上がり、多くの目やにが発生したり、目のかゆみや目の赤み、ゴロゴロとした異物感、痛みなどを伴うこともあります。また発症から時間が経過すると皮下に膿が形成され、皮膚が破れると膿が出てきます。一般的には膿が出ることで症状が改善されることが多いですが、そのまま重症化する可能性もあるため注意が必要です。
参考記事:『ものもらいとは|参天製薬株式会社』
ものもらいの原因って何?
ものもらい(麦粒腫)の主な原因は、まぶたの表面に存在する微生物が分泌腺に侵入し、感染症を引き起こすことで起こります。この感染症を起こすのは、ブドウ状球菌などの細菌と呼ばれるもので、感染源としては、
- 手が汚れた状態で目を触る行為
- 汚れたコンタクトレンズの使用
- 全体的な体調の悪化(免疫力の低下)
- 過度のアルコール摂取
などといった、不衛生や免疫低下などによる感染が要因として挙げられます。
参考記事:『ものもらいの原因|ひかる眼科』
ものもらいの種類とは?
ものもらいには、主に「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」と「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」の2腫類が存在します。ここからは、2つの疾患の特徴を詳しく説明します。
「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」とは?
麦粒腫とは、まつげの生え際に位置する「マイボーム腺」や「毛根」に細菌が感染することで起こります。具体的な症状としては、腫れ、痛み、かゆみ、めやに、充血などが起こります。
その後、皮下にうみがたまり、切開が必要なこともあります。
「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」とは?
霰粒腫とは、マイボーム腺の出口が詰まり、慢性炎症が起こり、皮下にあぶらの塊ができる疾患です。症状としては、しこり、腫れ、異物感などが起こります。マイボーム腺で起こるという点で麦粒腫と同じですが、感染を伴わないので、一般的に麦粒腫のような急性の症状ではありません。しかし、皮下のしこりが数か月も治らずに切開しようか迷う方が多いです。
結膜炎との違いは何?
「ものもらい」と「結膜炎」は、いずれも充血や目の分泌物といった類似した兆候を示すものの、異なる要因と特性を有します。結膜炎の中でもウイルス性結膜炎は、人から人へうつってしまうのが特徴的であるのに対し、ものもらいは主に細菌感染によるものですので、他人にうつることはありません。
参考記事:『「ものもらい」の原因・症状・対処法|ロート製薬株式会社』
治療方法や効果的な目薬は?
麦粒腫の治療方法について
ものもらいの治療方法は、患者様の具体的な病状によっても変わります。もちろん自然治癒によって消滅するケースもあります。麦粒腫は、細菌感染なので抗菌点眼薬を使用し、炎症を抑えるために低濃度のステロイド点眼薬が使われることもあります。腫れや痛みが強い時は、抗生剤の内服や膿を出すために穿刺(針でついて膿を出す)場合もあります。また痛みや腫れが和らいでも「しこり」が残る場合は、しこりの消滅に有効的な点眼薬を処方する場合もあります。
しこりが治らない場合は、手術にて切除することもあります。
霰粒腫の治療について
霰粒腫は、腫れに対して抗菌点眼薬や低濃度のステロイド点眼薬が使われることがあります。しかし、一番悩むのは、しこりが長引いて治らない時です。治らない時は、切開をする場合もあります。皮膚を切開する場合は、顔なので傷口が気になると思いますので、医師と相談することをお勧めします。
また余談ではありますが、治療に目薬を用いる場合は、医師が推奨する『正しい目薬の差し方』を行うことが大切です。
下記記事では、眼科医推奨の「正しい目薬の差し方」について詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
発症を防ぐためにも、
目に入るものは清潔に保ちましょう。
ものもらいは細菌性の感染症であるため、知らずしらずのうちに発症してしまう可能性のある病気です。特に夏場やコンタクトレンズを頻繁に使用している方などは発症リスクが高くなってしまうため、眼に汚れが入らないように心がけましょう。
万一ものもらいを発症してしまった場合は放置せず、お近くの眼科で治療を受けるようにしてください。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。