2024.02.07
加齢黄斑変性について|症状や見え方、治療方法について解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
加齢黄斑変性とは?
加齢黄斑変性は、年齢とともに進行する眼の疾患で、黄斑部(網膜の中央部分)に出血やむくみが生じ、視力の低下を引き起こします。この状態を放置すると、視力の回復が難しくなることがあります。実際、日本においては、失明原因の第4位とされています。
また網膜というのは、カメラで言うところの「カメラのフィルム」のような役割を果たしており、老化によりダメージを受けることで、クリアな画像が得られなくなってしまいます。このダメージが蓄積することで、視力が低下し、放置してしまうと、最終的には視力の回復が難しくなってしまいます。
参考記事:『知っておきたい加齢黄斑変性―治療と予防―|公益財団法人 日本眼科医会』
加齢黄斑変性の原因は?
加齢黄斑変性は、高齢者の発症が多いことからも、黄斑の老化や網膜色素上皮細胞の老化が主要な要因とされています。また男性の発症率は女性の約3倍ほどともいわれており、喫煙や栄養の偏り、遺伝的要因などが影響している可能性が考えられます。
また以前は、眼が受ける光に敏感である欧米人に多い疾患とされてきましたが、最近では日本でもこの症状の発症者が増えてきており、日本人の寿命が長くなったことや、西洋の生活スタイルの影響、さらにはテレビやコンピュータの使用が増えたことが関連しているとされています。
参考記事:『加齢黄斑変性|医療法人社団 海仁』
加齢黄斑変性の初期症状は?
加齢黄斑変性の初期症状は、視界の中央部が歪んで映る「変視症(へんししょう)」という症状が出はじめます。症状が進行すると、その歪みはより顕著になり、視力が低下したり、中央部が見えなくなる「中心暗点」が生じたりします。この中心暗点を発症してしまうと、色彩の識別が困難になることもあり、最悪の場合、視力を完全に失うことも考えられます。
またこの疾患の進行は、現在タバコの関連性が指摘されており、喫煙者の場合は特に注意が必要とされています。
参考記事:『加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)|スガモト眼科』
加齢黄斑変性の見え方は?
加齢黄斑変性症の症状・見え方はさまざまで、軽度な症状の場合「目が疲れているだけかも…」と放置されてしまうこともよくあります。ここからは、加齢黄斑変性を発症した際の「見え方」について4つ解説していきます。
ものが歪んで見える
加齢黄斑変性を発症すると、目の前の物体や文字がゆがんで見えることがあります。例えば、新聞などの文字を読んでいる際に、実際の文字が波打って見えるようなケースがあります。
ものが霞む・ぼやけて見える
加齢黄斑変性を発症すると、ものがクリアに物が見えない、あるいは細かい部分がはっきりと見えないことがあります。これも「視力が下がった」と片付けられてしまいがちな症状なため、視界の霞み・ぼやけには注意が必要です。
見ているものの中心が暗い、欠けて見えない
加齢黄斑変性の場合、視界の中心部分が暗くなったり、何かに遮られているかのように見えることがあります。
色の区別がつきにくい
加齢黄斑変性を発症すると、色の濃淡や異なる色を区別するのが難しくなることがあります。
参考記事:『加齢黄斑変性症|ゆり眼科クリニック』
加齢黄斑変性は自然治癒するの?
加齢黄斑変性は、自分で治療を行ったり、自然治癒させることができません。加齢黄斑変性は年齢とともに進行するもので、一度進行してしまうと元の状態に戻すことが難しいです。むしろ、放置しておくと視力の低下や失明にも繋がってしまうため、病院で加齢黄斑変性の可能性を伝えられた際には、医師の判断のもと、積極的に治療を行ってください。
参考記事:『黄斑変性症の見え方は?疑いがあった時の対処法とセルフチェック|先進会眼』
加齢黄斑変性の治療方法は?
抗VEGF療法(抗VEGF薬硝子体内注射)
最も多く行われている治療法です。
具体的には、VEGFの活動を抑える薬を眼の中に直接注射することで、脈絡膜新生血管の成長を促進するVEGFという物質の作用を抑制させます。新生血管の拡大や進行を効果的に抑制する方法です。
新生血管の光凝固法(レーザー光凝固)
脈絡膜新生血管が中心窩にない場合、レーザーを照射する光凝固法で、新生血管を焼いて治療をします。
光線力学療法(PDT)
光感受性物質であるベルテポルフィリン®(ビスダイン)という緑の色素を体内に注入します。このビスダインは新生血管に集まる性質があり、光に反応する特徴があります。特殊なレーザーを当てることで、ビスダインは化学的な変化を起こし、活性酸素を生成します。この活性酸素の作用により、新生血管の壁を破壊し、新生血管を消退させます。
硝子体手術
多量の出血や中心部に位置する新生血管の場合、それらを取り除く硝子体手術(硝子体を取り除く手術)の選択も考えられます。
下記記事では「加齢黄斑変性」の詳しい治療方法について解説していますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
加齢黄斑変性は完治させられる?
加齢黄斑変性は、現代の医学をもってしても完全に治すことが難しい病気とされており、発症後は治療を続けながら長く付き合っていく必要があります。
また加齢黄斑変性における治療は、症状のわずかな改善や維持、そして病気の進行を遅らせることを目的としており、治療を受けないままでいると、時間とともに視力が下がり、必要なものが見づらくなり、日常の生活にも支障をきたす可能性があります。
参考記事:『加齢黄斑変性に関する8つの疑問|川野眼科』
加齢黄斑変性の発症・治療に関するよくある質問
加齢黄斑変性の予防方法はありますか?
タバコ・紫外線が悪化の原因とされているため、喫煙者の場合は特に「禁煙」を呼びかけています。また紫外線から目を保護するため、サングラスをかけることも効果的でしょう。他にも「食事バランス」も指摘されており、緑黄色野菜やお魚中心の食事がいいと考えられています。
注射治療で視力は元に戻りますか?
早期に発見すると、抗VEGF薬硝子体内注射により比較的視力は良好に保たれる場合が多いです。しかし、黄斑の病状が進行した状態で抗VEGF薬硝子体内注射をしても、思ったような効果が得られない場合があります。そのため、早期発見・早期治療が重要です。
注射治療はいつまで続けるべきですか?
抗VEGF薬硝子体内注射は、新生血管を抑えることで、網膜下の水を取り除く効果があります。治療をやめると悪化して見えなくなりもとに戻らなくなることがあります。しかし、高額な治療なので、医師とよく話し合ってください。
両目同時に発症することもありますか?
加齢黄斑変性における両目発症事例も多く報告されており、割合としては約2割の方が両目とも加齢黄斑変性を発症すると言われています。そのため、視力を同時に失ってしまわないためにも、早期発見が必要です。
進行性の病気だからこそ、早期発見・治療を心がけましょう
加齢黄斑変性は一度発症してしまうと治療が難しい進行性の病気です。また日本人の失明原因の第4位とされているほど、目が見えなくなってしまうリスクが高い病気でもあります。そのため、本記事で紹介したような「見え方の異変」を感じたら、すぐに掛かりつけの病院を受診するようにしてください。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。