2024.02.07
コンタクトレンズの不適切な使用に要注意!失明や感染症リスクについて解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
コンタクトレンズで失明するって本当?
コンタクトレンズは「高度管理医療機器」であり、医師の判断のもと、適切な使用・管理が必要です。そのため使用方法を守らなかったり、不衛生なままのコンタクトレンズをつけると、目に感染症や炎症などを起こし、最悪の場合失明に至るケースもあります。そのため、使用する際には必ず医師の診察が必要です。
関連記事:『コンタクトレンズで失明することも!もう一度取り扱いをチェックしよう|COLOR+DA』
コンタクトレンズによる目のトラブルの原因は?
コンタクトレンズの使用に関するトラブルは、国民生活センターへの報告からも多くの事例が明らかにされています。特にインターネット通販による購入が増えている現代において、適切な説明を受けずにコンタクトレンズを使用するリスクが増加していると言えるでしょう。
ここからは、近年増加しているコンタクトレンズによる目のトラブルについて、
- 年代によるトラブル
- 購入先によるトラブル
- カラーコンタクトレンズによるトラブル
上記の3項目について、詳しく解説していきます。
年代によるトラブル
コンタクトレンズによるトラブルは「メガネ離れ」が盛んな20代、30代の若い世代がその割合を多く占めています。もちろん年代的にコンタクトレンズに慣れ親しんでいることも理由として挙げられますが、自己の判断でレンズを購入や取り扱いをすることが多いことも、若い世代におけるコンタクトレンズでの目のトラブルが増加している大きな要因となっています。
個人購入によるトラブル
インターネット通販で個人的にコンタクトレンズを入手している方も、トラブル人数としてはその半数以上を占めているのが現状です。これは、実際に商品を見て購入することなく、また、専門家からのアドバイスや注意喚起を受けることなく購入するため、適切でないレンズの選択や使用方法になる可能性が高まることにより目のトラブルも増加します。
カラーコンタクトレンズ(カラコン)によるトラブル
カラーコンタクトレンズ(カラコン)による目のトラブルも近年増加しています。これは、見た目やファッションの一部としての使用が増えていることや、医療目的としない安価なレンズが市場に出回っているため、たとえ適切な使用・管理を行っていたとしても、知らぬ間に目を傷つけてしまい、そこから角膜潰瘍などの感染症を起こしてしまいます。
参考記事『コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意を!|政府広報オンライン』
コンタクトレンズで起こり得る「目の疾患」とは?
ではコンタクトレンズを適切に使用しなかった場合に起こり得る「目の疾患」にはどのようなものがあるのでしょうか?ここからはコンタクトレンズの不適切な使用がキッカケで起こり得る目の疾患について詳しく解説していきます。
ドライアイ(表在性角膜炎)
ソフトコンタクトレンズの装用により、眼が乾燥し、異物感や充血を生じます。
ソフトコンタクトレンズは、多かれ少なかれ水分を含んでおり、その量を示す数値を「含水率」と言います。
「含水率が高い=レンズの含む水分量が多い」
「含水率が低い=レンズの含む水分量が少ない」ということです。
含水率の高いソフトコンタクトレンズは、柔らかく、装用感はいいのですが、レンズ表面から水分が蒸発すると、スポンジのように涙液を吸収し、眼が乾いてしまいます。
乾燥により角膜に傷がつくと、異物感や充血を生じます。
乾燥を防ぐため、普段から人工涙液やヒアルロン酸などの角膜保護剤、その他ドライアイの点眼を使用して頂く必要性があります。
また、コンタクトレンズの汚れ自体も乾燥の原因となるため、適切なレンズケアが必要であり、1日使い捨てソフトコンタクトレンズなど、頻回交換のレンズの方が向いていると言えます。
症状がひどいときは、コンタクトレンズ装用を一時的に中止して頂くことがあります。
※「含水率」はソフトコンタクトレンズ固有の数値であり、ハードコンタクトレンズには当てはまりません。
巨大乳頭性結膜炎
ソフトコンタクトレンズと上眼瞼の裏側の結膜との物理的な摩擦やアレルギー反応により、上眼瞼の裏側にぼこぼことした凹凸(乳頭)ができます。
分泌物が増え、眼脂やかゆみなどの症状がでたり、上眼瞼の裏側にレンズが付着し、上方へずれやすくなったりします。
コンタクトレンズ装用の中止、抗アレルギー剤やステロイド剤の点眼が必要ですが、完全に治癒させるには時間がかかります。
ソフトコンタクトレンズの装用を中止すると日常生活上不便を強いられる方については、なるべく装用時間を短くする、調子の悪いときは装用を中止して点眼治療を行う、などの対処となっているのが現状です。
角膜潰瘍
角膜潰瘍は、長時間のコンタクトレンズ装用や、不適切なサイズのレンズの使用、そしてコンタクトレンズを不衛生にしたままにすることで発症します。特に目の「角膜表面」にキズが入ってしまうと、その隙間から細菌やカビが侵入しやすくなり、角膜潰瘍を起こすリスクが高まります。
角膜潰瘍の症状としては、目の強い痛みや充血、さらには視力の低下といった症状が現れます。症状が進行したまま放置すると、最悪の場合失明のリスクも考えられます。また、感染が治癒した後であっても、視力に永続的なダメージを受ける可能性があるため、定期的な眼科受診が推奨されています。
下記記事では「角膜潰瘍」についてより詳しく解説していますので、角膜潰瘍の詳しい症状については、こちらもあわせてご覧ください。
ウィルス性結膜炎
ウィルス性結膜炎とは、ウイルス感染が原因となる結膜炎のことを指します。この状態は、手が汚れている状態でコンタクトレンズを触ることにより引き起こされることがあります。ウィルス性結膜炎は、最初は片目だけにに現れることが一般的で、目が赤くなったり、かゆみが出るなどの症状が現れます。また涙の分泌量が増えたり、目やにが多くなります。
ウィルス性結膜炎は感染力が非常に高いため、職場や学校、家族間などでの感染を避けるための対策が必要となってきます。
下記記事では「結膜炎」についてより詳しく解説していますので、結膜炎の詳しい症状については、こちらもあわせてご覧ください。
アカントアメーバ角膜炎
アカントアメーバ(原虫)が角膜の傷から入り込み、増殖することにより起こります。
強い充血、痛み、流涙を特徴とし、難治性で、治癒しても角膜に混濁や不正乱視を残してしまい、視力が戻らない場合があります。
通常、アカントアメーバは淡水や土壌に生息していますが、水道水中にも存在するため、水道水によるソフトコンタクトレンズの洗浄や保存が感染の原因となります。
アカントアメーバには生活サイクルがあり、生育環境が厳しくなると、シスト(嚢子)というカプセルに包まれた構造をとり、生き残ります。このことがアカントアメーバ角膜炎の治療を難しくしています。
治療には抗真菌薬の点眼や点滴、病巣搔爬(物理的に病巣を削り取る)を行いますが、決定打がなく、治療に何ヶ月も要したり、入院を余儀なくされたりすることがあります。
このように、アカントアメーバ角膜炎は、治療の難しい病気ですが、正しいレンズケアを行うことで防ぐことのできる病気でもあります。
ソフトコンタクトレンズの洗浄や保存には専用のものを使用し、レンズケースも使用後は乾燥させる、数ヶ月に一度は新しいものと交換するなど、基本的なケアをきちんと行いましょう。
参考記事:『コンタクトレンズのよくあるトラブル・病気|メガネスーパー』
Overwear(長時間装用)
ソフトコンタクトレンズを、規定の装用時間を越えて長時間装用し続けることにより起こります。
目の酸素不足をきたし、角膜に浮腫をきたし、視界が白くかすみます。
瞬きを行わない就寝中の装用は、レンズと角膜の間の涙液交換が行われにくく、酸素不足を生じやすいため、特に注意が必要です。
レンズの装用を中止し、消炎剤の点眼を行います。
コンタクトレンズ購入前に眼科受診しないのはNG?
コンタクトレンズは目に直接触れるものですので、適切な検査・処方が行われていないと、先に述べたような重大な目の疾患をもたらすことが考えられます。そのため、安全にコンタクトレンズの使用を継続するためには、購入前・購入後における定期的な眼科検診が不可欠です。
またコンタクトレンズ処方における眼科検査では、
- まぶたや結膜にアレルギー疾患が発生していないか?
- 角膜の表面にダメージがないか?
- 角膜の裏側にある内皮細胞が正常であるか?
などといった目の状態を入念にチェックします。さらに目の奥(眼底)に異常がないか、眼圧が正常範囲内であるかも確認されます。これらの情報をもとにコンタクトレンズの装用が適切であるかを判断します。また、最適なコンタクトレンズを選択するためには、度数や視力、レンズが目にフィットするためのカーブの測定も必要です。定期的にこれらの検査を受けることで、目の健康を維持しながら、快適にコンタクトレンズを使用することができます。
参考記事:『コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意を!|政府広報オンライン』
コンタクトレンズによる目のトラブルを防ぐには?
レンズケアは正しい方法で毎日行う
コンタクトレンズを清潔に保つことは、感染リスクを低減し、安全にコンタクトレンズを使用するために非常に重要です。正しいケア方法がわからないという方は、お近くの眼科に相談するようにしてください。
レンズ洗浄は、使用前と使用後の「2回」行う
レンズ表面の細菌や汚れを除去することで、目の健康を守ることができます。また使用後の洗浄はもちろん、使用前にもしっかりとレンズ洗浄を行うようにしてください。
医師から指導されたケア用品・洗浄液を使用する
すべてのコンタクトレンズ用品はそれぞれ成分などもことなるため、自分のコンタクトレンズにあった、医師推奨のケア用品を使用するようにしてください。
ソフトコンタクトレンズのケアに水道水は使用しない
ソフトコンタクトレンズを水道水ですすいだり、水道水でつくった自家製生理食塩水を使用したりすると、アカントアメーバーなどがソフトコンタクトレンズに付着し、深刻な眼障害を起こす危険が高くなるため厳禁です。こちらも医師が推奨する洗浄液を使用して洗うようにしてください。
ケア用品を変える場合は必ず眼科医に相談する
新しい製品には、目に合わない成分が含まれている場合があり、使用後に目に炎症が発生するケースもあります。そのため、ケア用品を変更する場合は、医師の判断のもとで変更することが推奨されます。
目のまわりの化粧は避ける
特に女性においては、化粧品の成分がレンズに付着することで、目への刺激やアレルギーの原因となることがあります。そのためコンタクトレンズを着用する際には、できるだけ目元の化粧を避けるようにしましょう。
参考記事:『正しいコンタクトレンズのケア|日本コンタクトレンズ学会』
毎日使うものだからこそ、適切なケアと正しい使い方が大切
コンタクトレンズはメガネに変わる手軽な機器として、近年利用される方の割合も増えてきました。一方で、毎日正しくケアできていないが故に、「コンタクトレンズで目の疾患を患った」という事例も数多く報告されているのが現状です。
便利で快適に利用できるものだからこそ、「今日くらいは…」と手入れを怠らず、毎日適切な手入れ・管理を心がけましょう。正しい手入れの方法がわからないという方は、まずはお近くの眼科に相談するようにしましょう。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。