白内障手術のタイミングは?治療の必要性やよくある質問に眼科医が回答!

白内障手術のタイミングは?治療の必要性やよくある質問に眼科医が回答!

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。

白内障とは?

白内障とは、目の中の「水晶体」が濁ることで視界が悪くなる病気です。白内障により水晶体が濁ってしまうと、「以前よりも見えにくい・視界が悪い」などの症状が出てしまい、日常生活に支障をきたします。

また白内障は、水晶体の「タンパク質変性」が原因であり、イメージで言うならば「ゆで卵の白身が透明に戻らない」のと同じ現象が起きており、一度発症すると、自然治癒することはありません。

白内障について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。

「白内障の治療」は必要?

「白内障の治療」というのは手術しか方法がありません。白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、透明な眼内レンズに入れ替えることで、症状を改善することが目的です。白内障用の目薬は、進行を遅らせるのが目的であり、白内障が治るわけではなく視力は回復しません。そのため軽度な白内障であれば目薬をして、進行の様子見を行うのも手ですが、白内障が自然治癒したり、目薬で回復することはないということを覚えておく必要があります。

白内障手術のタイミング

白内障の手術はタイミングを伺いながら放置されがちですが、白内障の手術の1番のタイミングは「見えにくくなった時」です。しかしながら患者様にも、手術をためらってしまう要因は大きくありますよね。

  • 手術のリスクが心配
  • 仕事があり、白内障手術を受ける暇がない
  • 手術費用が心配

など、さまざまな理由があり、手術を受けるか迷っている方も多くいるでしょう。そこで、ここからは

  • 症状から見て手術が必要なケース
  • 眼科医から見て手術が必要なケース

に分けて、詳しく解説していきます。

症状から見て、手術が必要なケース

「見えにくいから、手術かなあ。」「免許更新したいから、手術を受けないといけないかなあ。」と考えている方が多いと思います。白内障手術を受ける方の殆どが、このような場合です。

見えにくいと感じた時

まぶしい、かすむ、視力が下がったなどの症状があり、不便を感じた時が1番の白内障手術のタイミングです。

屈折矯正(目の度数の矯正)

度の強いメガネをかけたくない方は、軽い白内障でも手術を行い、強い度数のメガネをかけなくてよいようにします。

運転免許をお持ちの方

「免許更新の基準がよくわからない。」という方は多いと思いますので解説しますと、普通自動車の運転免許更新時の基準は、「左右とも0.3以上で、両眼で0.7以上」が必要となります。しかし、片眼の視力が0.3未満の場合は、もう片方の眼の視力は0.7以上で視野が左右150度以上必要となります。何とも、複雑な基準です。

できるなら、両眼とも0.7以上見えるようにして、より安全に運転したいですよね。運転免許更新の希望があり、両眼で見て、視力0.7未満の方は、白内障手術が必要になります。視力に自信がない方、高齢者講習を受ける年齢になった方には、運転免許の失効にならないように、早目の眼科受診をお勧めします。

眼科医から見て、手術が必要なケース

「あなたは、白内障で手術が必要です。」と、突然、眼科で言われるかもしれません。「でも、見えていて、何も困ってないのに。」と思うかもしれません。では、どのような場合に、眼科医から手術を勧められるのでしょうか?

急性緑内障を起こす可能性があるケース

白内障を放置すると、失明に至る「急性緑内障」を起こすことがあります。水晶体は年齢とともに、大きくなります。大きくなった水晶体により、房水(目の中の水)の流れが悪くなり、眼圧が上がると、失明する可能性のある急性緑内障が起こります。

しかし、白内障手術により、大きくなった水晶体を取り除き、薄い眼内レンズに入れ替えることで、急性緑内障を予防することができます。このような方には、必ず、白内障手術をお勧めしています。

急性緑内障発作について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。

白内障が進行して、放置すると手術が難しくなるケース

白内障が進行すると、手術が難しくなることがあります。手術が難しくなると、手術の合併症のリスクが高まります。そのような場合は、早目の手術をお勧めしています。

認知症を患っているケース

「視力が悪いと、認知症になる確率は2.4倍にも膨れ上がる」ことが近年の研究で明らかになっており、これは白内障手術(治療)により軽度認知機能障害が、2割程度防げられることもわかっています。

また、認知症が悪化すると、手術中に動いてしまい、手術ができなくなることがあります。人生100年時代、生きている間は、見えるようにしておくべきではないでしょうか。認知症が軽い時又は認知機能障害が起こる前に白内障手術をすることを考えていいかもしれません。

白内障手術についてよくある質問

白内障手術のリスクが怖いです

どんな手術でも、「手術のリスクが心配」という方は、多いと思います。しかし、白内障手術の安全性は非常に高く、今も機器の進歩により安全性が高まっています。しかし、全くリスクがゼロではありません。以下のリスクを踏まえ、しっかりと治療に向き合うことも大切でしょう。

手術中に起こるリスクについて教えてください

白内障手術は、水晶体嚢という袋の中にある濁った水晶体を取り除き、空になった水晶体嚢の中に眼内レンズを入れる手術です。水晶体嚢は、チン小帯という細い糸で眼球の壁に全周付着しています。なかには、チン小帯が弱い方がいます。チン小帯が弱いと、水晶体嚢に眼内レンズが入れられない場合があります。

眼内レンズが入らなければ、明るさはありますが、ピントが全く合わないので、非常に見えにくいです。そのようになった場合は、後日、眼内レンズを眼球壁に固定する手術や、縫い付ける再手術が必要になります。しかし、1%未満の非常に低い確率です。

感染症の心配はありますか?

手術の傷口は2mm程で非常に小さいですが、そこからばい菌が入り、感染症を起こすことが、非常にまれにあります。手術後、特に1週間は、忘れずに目薬をすること、目をおさえないこと、目のまわりを清潔にすること、保護用メガネをかけることが大切です。

術後は眼圧上昇のリスクを抑えられますか?

手術後、一過性に眼圧が上がることがありますが、通常1~2日で下がります。

後発白内障について

手術後、数か月~数年すると水晶体嚢が濁って、視力が下がることがあります。しかし、レーザー治療で濁りをとることができますので心配はいりません。

白内障手術の費用はどのくらいですか?

白内障手術は、両目の手術で3割負担なら約12万円、2割負担なら約8万円、1割負担なら約4万円程度となります。高額療養費制度により、1か月に支払う金額の上限が、年齢や所得で決まっています。両目手術する方は、両目同じ月に手術をされた方が、支払いが少なくなる場合があります。

生命保険に加入している方は、手術給付金を受けることができる場合がありますので、加入されている生命保険会社に確認することも重要です。

白内障の手術費用について詳しく知りたい方は、ぜひ下記記事もあわせてご覧ください。

仕事が忙しく、受診・治療が難しいです

若くして白内障になると、仕事のため、手術を受ける時間がとれない場合があります。しかし、白内障を放置すると手術が難しくる、運転や仕事に支障をきたすなどデメリットが多くあります。通常、片目を手術をしたら、もう片目は別の日に手術する場合が多いです。しかし、忙しく時間がない方は、両眼同日手術(同じ日に両目の白内障手術をする)を考えてもいいかもしれません。

まとめ

  • 白内障手術をうける最も良いタイミングは”見にくくなった時”です。
  • ”運転免許更新が必要な方” ”度の強いメガネをかけたくない方”は、白内障手術を考えてもいいかもしれません。
  • ”急性緑内障を起こす可能性がある方” ”放置すると手術が難しくなる方” ”認知症がある方”は、眼科医から白内障手術を勧められることがあります。
  • ”手術リスクが心配な方” は、診察を受け、他の方より手術リスクが高い目かを聞いた方が安心できるかもしれません。最近の白内障手術は、安全性が高いので、それほど心配しなくていいかもしれません。しかし、目によっては、手術リスクが高い目があります。
  • ”手術費用が心配な方” は、高額療養費制度や生命保険の確認が必要です。
  • ”忙しくて、手術ができない方”は、両眼同日手術を考えてもいいでしょう。
  • 白内障手術は、安全性が高く、メリットが大きい手術です。しかし、いろいろな理由で、白内障手術を迷われている方は多いと思います。白内障手術を迷われている方は、眼科を受診して、詳しい検査をして、心配なことを相談されては、いかがでしょうか。

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
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