2024.02.09
白内障手術の費用は?手術までの期間や合併症リスクについても解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
白内障とは?
白内障とは、目の中の「水晶体」が濁ることで視界が悪くなる症状です。白内障により水晶体が濁ってしまうと、「以前よりも見えにくい・視界が悪い」などの症状が出てしまい、日常生活に支障をきたします。
また白内障は、水晶体の「タンパク質変性」が原因であり、イメージで言うならば「ゆで卵の白身が透明に戻らない」のと同じ現象が起きており、一度発症すると、自然治癒することはありません。
白内障について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。
白内障手術の費用はどれくらい?
一般的な白内障手術の費用相場は、保険適用の場合、3割負担の方は約50,000〜60,000円、2割負担の方は約35,000〜40,000円、1割負担の方は約20,000円程度となります。保険適用での治療の場合、病院ごとの差は殆どあまりありませんが、以下にて当院の手術費用を手術内容ごとにまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
当院の手術費用
保険診療の眼内レンズ手術
一般的に単焦点眼内レンズを使用します。料金は、すべて保険適用です。
選定療養の多焦点眼内レンズ手術
2020年4月より、多焦点眼内レンズを用いた手術が、選定療養で行うことができるようになりました。選定療養とは、国内で承認された多焦点眼内レンズを使用することで、多焦点眼内レンズにかかる費用のみを自己負担し、それ以外の手術代、診療代、検査代、薬代を保険診療で受けられるという制度です。
当院では、日本で2019年の6月に許可を受けた国内初の3焦点眼内レンズであるパンオプティクスが、更に進化し透明性がアップグレードしたクラレオン パンオプティクスを使用できるようにしています。
自由診療の多焦点眼内レンズ手術
自由診療は、国内で認められていない海外の多焦点眼内レンズを使用する手術です。料金は全額自己負担です。自己負担額には、多焦点眼内レンズ代、手術代、術後3カ月の診療代、検査代、薬代が含まれます。
当院では、多焦点眼内レンズのデメリットであるハロー・グレアが殆どないイタリア製の多焦点眼内レンズであるミニウェルを使用することができます。多焦点眼内レンズの中で、ミニウェルが最も不満が少ないという学会報告があります。
当院の白内障手術における費用は、下記ページにも詳しく掲載していますので併せてご覧ください。
関連ページ:『料金表(白内障治療)|岐阜市・関市の眼科は、くまだ眼科クリニック』
白内障手術の費用を抑えるポイントは?
白内障手術の費用は、目の中に入れる「眼内レンズ(白内障レンズ)」の種類によっても異なりますが、一部「高額療養費制度」や「生命保険」の利用により、手術費用をおえられるケースもあります。ここからは上記制度の利用について詳しく解説していきます。
高額療養費制度を利用する
手術などの高額な治療を受けた場合、1か月に支払う自己負担金に年齢や所得によって上限額が設けられています。自己負担額を超えた分は、後から払い戻されます。一時的に支払うのも大きな負担になりますので、事前にわかっている場合は、『限度額適用認定証』をもらっておくと、受付での支払額は限度額までとなります。加入されている公的医療保険の窓口へ申請する必要があります。
生命保険を利用する
個人で生命保険に加入されている方は、手術給付金を受けとることができる場合があります。選定療養や自由診療による白内障手術でも、全額ではなくても手術給付金が出る場合があります。加入されている生命保険会社にご確認ください。
眼内レンズの種類や違いについては、下記記事に詳しくまとめていますので、こちらもあわせてご覧ください。
白内障診断されてから、手術までの期間はどのくらい?
白内障手術は、通常、緊急手術ではありませんので、手術日を決めて手術を行います。当院では、手術までに2回検査にきてもらいます。手術日は、患者さんのご希望日に合わせた日で行えるよう努めています。
また免許が近い方やお急ぎの方などについては、早目の手術日も可能ですし、両眼同日手術もしていますので、お急ぎの方は予定させていただきます。
白内障手術のリスクは?
白内障手術は、眼科で最も多く行われている手術と言われており、非常に安全性の高い手術です。しかし、確率は非常に低いですが合併症などの術後リスクはあり得ます。ここでは、白内障手術中、白内障手術後に起こり得るリスクについて説明します。
手術中の合併症の可能性
駆逐性出血
手術中に、突然、目の中で出血する予想が難しい合併症です。しかし、確率は、非常に低く、経験したことがない眼科医がいるくらいの非常に稀な合併症といえます。
チン小帯断裂と水晶体嚢破損
水晶体は、水晶体嚢という非常に薄い膜で包まれています。水晶体嚢はチン小帯という細い糸で眼球壁に全周くっついています。そして白内障手術は、眼内レンズをこの水晶体嚢の中に入れる手術です。
チン小帯が切れていたり、水晶体嚢が損傷していると、眼内レンズが通常の位置に入れられない場合が稀にありますが、そのような場合は、眼内レンズを眼球壁に固定する手術や縫い付ける手術といった追加の手術が必要となります。
手術後に起こり得る合併症について
眼内炎
白内障手術後に、ばい菌(細菌)が入り、発症します。約2000件~3000件に1件起こると言われています。手術後3日~1週間に起こる急性眼内炎と術後1か月以上で起こる遅発性眼内炎があります。急性眼内炎は、視力低下、眼痛、羞明(まぶしさ)、充血などの症状が起こり、細菌の種類によっては失明することがある白内障手術の中で最も怖い合併症と考えられています。
そのため、白内障手術後の通院は1週間以内が多くなっていると思います。予防法は、術前3日前からの抗生剤点眼、手術直前の消毒や洗眼、手術室の空調の管理、手術機器の滅菌、術後の点眼、術後の生活の指導などがあげられます。しかし、日常のどこにでも細菌は存在しますので、100%予防することは不可能なのが現状です。
眼圧上昇
術後に、一過性に眼圧が上がることがありますが、ほとんどの場合、数日で下がります。
飛蚊症
手術後に飛蚊症(黒い虫のようなものが飛ぶ)を訴えられる方がいます。これは、ほとんどの場合、もともと自分の目の中にある濁りが、白内障手術で明るくなったために、余分なものまで見える現象です。しかし、非常に稀ですが、炎症や網膜剥離などが起こっていることがありますので注意が必要です。
水疱性角膜症
目の表面には、角膜という透明な部位があります。角膜の裏側には、角膜内皮細胞という角膜から水分を排出している細胞があります。手術により、角膜内皮細胞が減少し過ぎると、角膜に水がたまり濁ってしまいます。そうなると、角膜内皮移植が必要になります。
白内障手術前に角膜内皮細胞の数を測っていますので、もともと角膜内皮細胞の数が少ない方は、水疱性角膜症のリスクを説明しています。
後発白内障
白内障手術後、数か月~数年で、眼内レンズを入れている水晶体嚢が濁ることがあります。しかし、レーザー治療で、濁りをとることができます。一度レーザー治療で濁りをとると、もう濁ることはありませんので、過度な心配はいらないでしょう。
上記内容や、その他確認しておきたいリスクなどがあれば、術前に事前に医師と相談するようにしましょう。
まとめ
- 白内障手術は、眼内レンズの種類により料金体系が異なります。
- 眼内レンズの種類には、保険診療の単焦点眼内レンズ、選定療養の多焦点眼内レンズ、自由診療の多焦点眼内レンズがあります。
- 高額療養費制度や生命保険により、自己負担金を減らせる場合があります。
- 手術をすると決めてから、手術をするまでの期間は、ご希望に添えるように努力します。
- 白内障手術は、眼科で最も多く行われている手術で、安全性が高い手術ですが、リスクがゼロではありません。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。