白内障と緑内障の違い|併発・失明の可能性や、治療方法について解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
白内障と緑内障の違いは?
白内障と緑内障は、よく耳にする病気ですが名前もよく似ているため、違いがわからない方も多いのではないでしょうか。白内障は、 目の中の「水晶体」が白く濁り、視界が不鮮明になったり、かすみやボヤけといった症状が現れます。一方で緑内障は、 眼圧(目の中の圧力)により視神経が損傷し、視野が欠けたり、視野全体が狭まくなるといった症状が現れます。
白内障と緑内障の大きな違いとしては、白内障は手術により視力を回復することが可能なのに対し、緑内障は眼圧を下げることで症状の進行を抑えること、つまり現状維持の治療が目的になります。
下記記事では白内障についてより詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
白内障と緑内障は併発する?
緑内障には、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障があります。開放隅角緑内障は線維柱帯(房水が流れる部位)が目詰まりを起こし眼圧が上昇することで起こります。閉塞隅角緑内障は水晶体が膨らみ、隅角が狭くなり線維柱帯から房水が流れにくくなることで起こります。
白内障と緑内障は同時に発症することはあるのでしょうか?白内障が原因で緑内障になることはあるのでしょうか?答えは、両方ともYESです。
白内障と開放隅角緑内障、白内障と閉塞隅角緑内障の同時発症は珍しくありません。緑内障の割合は、40歳以上では20人に1人で、加齢とともに割合が増します。よって、加齢で起こる白内障と併発することは珍しくありません。
その中でも、閉塞隅角緑内障は、主に白内障の進行が原因で起こります。白内障が進行すると水晶体が膨らみ、隅角が狭くなり線維柱帯から房水が流れにくくなります。閉塞隅角緑内障の中には、急性に発症する急性閉塞隅角緑内障があり眼圧は急激に上昇し40~80mmHg(正常10~21mmHg)となり、失明に至ることもあります。閉塞隅角緑内障の治療は、膨らんだ水晶体を薄い眼内レンズに入れ替える白内障手術となります。そのため、医師に「閉塞隅角緑内障を起こす可能性があるため、白内障手術をしましょう」と言われることがあります。
参考記事:『白内障お悩みQ&A|アイケアクリニック』
白内障の治療方法は?
白内障治療は、比較的軽度なものであれば目薬で様子をみることもありますが、基本的には手術治療が必要となります。また白内障も、緑内障と同様に自然治癒することはありません。手術方法としては、濁った水晶体を機械で吸い取って眼内レンズに入れ替える手術が一般的で、緑内障などの他の病気が併発しているケースであっても手術を行うことが可能です。
白内障の治療方法について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。
緑内障の治療方法は?
点眼治療
眼圧を下げる目薬を用います。緑内障治療に用いられる点眼薬には、緑内障(眼圧上昇)の原因となる房水の産生を抑制するものと、房水の流出を促すものの2種類があります。
緑内障の点眼薬について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。
レーザー手術
レーザー手術にも主に2つの治療方法があり、
- 開放隅角緑内障では、房水の出口である線維柱帯にレーザー光線を照射して、目詰まりを解消する『隅角光凝固術』
- 閉塞隅角緑内障では、レーザー光線で虹彩の根部に小さな穴を開けて房水の通り道を新たに作る『虹彩光凝固術』
上記2つの方法があります。また基本的にレーザー治療は、日帰りで行えます。
観血手術
観血手術は、上記の点眼治療やレーザー治療によっても眼圧が十分に下がらなかったり、視野が狭くなっていったりする場合に行われます。
開放隅角緑内障の手術治療
- 房水が排出される部位(線維柱帯)を切開することで、房水の排出を改善する手術
- 房水を目の外へ流すバイパス手術(濾過手術)
- 特殊なチューブを使って、房水を目の外に流す「チューブシャント手術」
閉塞隅角緑内障の手術治療
- 白内障手術により、膨らんだ水晶体を薄い眼内レンズに入れ替えることで、隅角を広ろげ、房水の流れを改善させます。
こちらについても、手術費用や入院の有無、治療後における経過観察の注意点などを医師からしっかりと聞いておくようにしましょう。
緑内障の治療方法について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。
併発した場合、同時治療(手術)はできる?
もし緑内障と白内障を併発してしまった場合、白内障・緑内障の同時手術もひとつの選択肢となるでしょう。とはいえ、緑内障のタイプにより手術内容が異なります。
開放隅角緑内障の場合
白内障手術と緑内障手術(線維柱帯切開術、濾過手術、チューブシャント手術)の同時手術は可能です。
閉塞隅角緑内障の場合
前述のように、まずは白内障手術をして経過観察をすることが多いです。しかし、状態によっては緑内障手術を併用することもあります。
- どのような治療が最善なのか?
- そもそも同時手術を行うのが本当に適切なのか?
など決定するには、疾患の状態、現症状、眼圧、視野などを含む精密検査の結果と、患者様自身の希望を聞きながら決めます。
まとめ
- 白内障、緑内障は、放置すると進行します。緑内障は、日本人の失明原因の1位です
- 緑内障には、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障があります
- 開放隅角緑内障は線維柱帯(房水が流れる部位)が目詰まりが原因になります
- 閉塞隅角緑内障は、白内障により膨らんだ水晶体が原因になります
- 開放隅角緑内障の手術治療には、線維柱帯切開術、濾過手術、チューブシャント手術があります
- 閉塞隅角緑内障の手術治療は、白内障手術です
- 白内障と緑内障の同時手術は可能です
- 緑内障の手術の可否、術式、白内障手術との同時手術などは、医師と相談して慎重に決めて下さい
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。