急性緑内障発作について|前兆や治療方法、一般的な緑内障との違いを解説

急性緑内障発作について|前兆や治療方法、一般的な緑内障との違いを解説

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。

急性緑内障発作とは?

一般的な緑内障の場合、眼圧(目の中の圧力)は時間をかけて徐々に高くなっていくのに対し、急性緑内障発作というのは急激に眼圧が上がってしまう疾患のことを言います。急性緑内障発作が起きた場合、眼圧は40〜80mmHg(基準値は10〜21mmHg)と数倍も高くなり、その結果、「目の痛み」「頭痛」といった症状が出現し、放置すると短期間で失明することがある恐ろしい病気です。

緑内障と眼圧の関係性について詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。

一般的な緑内障との違いは?

緑内障とは、眼圧の上昇により視神経が損傷し、最悪のケースでは失明に至ることさえある疾患ですが、一般的に「眼圧上昇」やそれに伴う「視野欠損・視力低下」は段階的に進行するもので、初期段階では自覚症状がほとんど現れません。しかし、急性緑内障発作では眼圧が急激に上昇するため、症状が現れてから1週間〜早くて1日で失明してしまう恐れがあるため、早急に治療が必要になります。

一般的な緑内障についての解説は、下記ページもあわせてご覧ください。

関連ページ:『緑内障について|岐阜市・関市の眼科なら、くまだ眼科クリニック

急性緑内障発作の前兆は?

急性緑内障発作が起きる前兆は、目の痛みや頭痛に加えて、吐き気や嘔吐、霞がかった視界(霧視)などの症状が現れます。また、頭痛や吐き気などの初期症状は、他の病気と間違えられることがあり、急性緑内障発作だと診断されず、治療が遅れてしまうことがあるため、注意が必要です。

症状が現れた際の応急処置は?

急性緑内障発作の症状が現れたら、まずは速やかに眼科を受診しましょう。急性緑内障発作に対する応急処置としては、眼圧を下げる点眼治療や点滴治療を行います。またこれらは眼圧を下げて痛みを緩和させる処置であり、その後は再発を防ぐために手術やレーザー治療などを行うことが一般的です。

参考記事:『緑内障の治療|医療法人社団 実直会 富田実アイクリニック銀座

急性緑内障発作の治療方法は?

先にもお話した通り、「閉塞隅角」で起こる急性緑内障発作は、失明に至るまでの時間が早いため早期治療が必要ですが、現状「開放隅角緑内障」と診断されている方も、数年経つと「閉塞型」に変化してしまう可能性は十分にあるため、注意が必要です。

ここからは、具体的な治療方法について解説していきます。

①初期治療:目薬・点滴による眼圧上昇の抑制

まずは、点眼や点滴といった薬の投与で、急激に上がった眼圧を下げます。具体的な治療方法は以下の通りです。

  • ピロカルピン点眼の頻回点眼
  • 高浸透圧薬(マンニトールなど)の点滴

また余談ではありますが、こういった治療の難しい疾患に目薬を用いる場合は、医師が推奨する『正しい目薬の差し方』を行うことが大切です。

下記記事では、眼科医推奨の「正しい目薬の差し方」について詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。

②レーザー治療、白内障手術

レーザー虹彩切開術(LI)や周辺虹彩切除術(PI)と呼ばれる手術により、虹彩(茶目)に小さい穴を開けることで原因である房水(目の中を満たす透明な液体)の流れを改善します。また白内障手術が選択される場合も多くあり「緑内障なのに、白内障手術をするの?」と思われる方も多いかと思いますが、白内障手術では水晶体(レンズ)を薄い人工のレンズに入れ替えるため、閉塞隅角と呼ばれる房水の流れが悪くなっている状態を改善し眼圧を下げることができるのです。

また急性緑内障発作が一方の眼で起きた場合、もう一方の眼でも発症する可能性があるため、予防的にレーザー治療や手術療法を実施することもあります。

急性緑内障発作を「誘発し得る要因」とは?

急性緑内障発作は年齢を重ねるにつれて発症リスクも高まりますが、他の発症要因として「隅角が狭くなり眼圧が上昇しやすい状態になること」が挙げられます。隅角が狭くなる要因としては、たとえば「抗コリン作用」を持つ薬の服用などが挙げられ、一般に市販されている風邪薬(抗ヒスタミン薬・睡眠薬など)、さらには手術や胃カメラ検査時の麻酔薬などの服用が該当します。

上記の薬を使用することで急性緑内障発作が発生する可能性が上がりますので、服用の際には医師と相談するようにしましょう。

参考記事:『急性緑内障発作について|経堂こうづき眼科

急性緑内障発作を発症しやすい年齢は?

眼の病気は加齢とともに発症・進行するリスクが高い傾向にありますが、特に急性緑内障発作の場合、「60代以上で遠視の方」に好発しやすいことが分かっています。遠視の場合は隅角が狭くなりやすく、「閉塞隅角」になってしまうリスクが高まります。また白内障の発症・進行も隅角が狭くなる要因とされており、これらを発症しやすい60代以上の方が、急性緑内障発作の発症リスクも高くなると言われているのです。

参考記事:『もう迷わない!救急外来の初期対応 ~緑内障発作編~|民間医局コネクト

進行の早い疾患だからこそ、早期受診が大切

本記事でもお話した通り、急性緑内障発作というのは急激な眼圧の上昇によって視神経が損傷してしまう疾患であり、発症から数日で失明に至ってしまうこともある恐ろしい病気です。目の痛みや頭痛などのわかりやすい症状が出やすい一方で「眼の異常による症状」だと気付かれにくく、発見が遅れてしまうケースもよくあります。

  • 目が痛む
  • 目の奥からくる頭痛
  • 吐き気や嘔吐
  • 視界がよく霞む

これらの症状を覚えはじめたら、まずは大切な目を守るため早めに眼科に受診するようにしましょう。

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
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