2024.02.09
緑内障と眼圧について|数値の目安から、眼圧低下の治療方法について解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
緑内障とは?
緑内障(りょくないしょう)とは、「眼圧の上昇」により視神経が損傷し、視野(見える範囲)が徐々に狭くなる疾患です。視神経は、「視覚情報を脳に伝達する重要な役割」を果たしています。そのため緑内障が進行し治療が遅れてしまうと、視野が失われ、最悪のケースでは失明に至ることもあります。
緑内障の詳細な説明については、下記ページもあわせてご覧ください。
関連ページ:『緑内障について|岐阜市・関市の眼科なら、くまだ眼科クリニック』
緑内障の具体的な症状は?
緑内障の症状としては、「視野が徐々に狭くなること」が挙げられます。しかし症状がゆっくり進行する場合や、両眼同時に進行しない場合も多いため、視野の欠損に気づくのが遅れるといったケースも多くみられます。そのため緑内障は、かなり進行して自覚症状が出るなど、比較的発見が遅れてしまいがちな病気となっています。
また稀に眼圧が急激に上昇し、短期間で失明に繋がってしまう「急性緑内障発作」という疾患も存在するため注意が必要です。
「急性緑内障発作」についてもっと詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。
一般的な眼圧の数値(正常値)は?
先にも、緑内障の原因は「眼圧の上昇」とお話ししましたが、具体的にどの程度から「緑内障」と判断されるのでしょうか?一般的な眼圧の基準値(正常値)としては、通常10〜21mmHgと定義されています。しかし、この範囲での眼圧が視神経にどの程度の影響を及ぼすかは、人によって異なります。以前は、緑内障の症例として、「眼圧が基準値を超過することで視神経が損傷を受け、緑内障が引き起こされる」というパターンが一般的でしたが、近年では、眼圧が正常でも発症する「正常眼圧緑内障」が非常に多いことがわかっています。
緑内障にもさまざまな種類がありますが、広義の※原発開放隅角緑内障を発症している方のうち、上記のように「約90%の方が眼圧が正常な方(正常眼圧緑内障)」だったというデータもあります。そのため、眼圧が基準値(21mmHg)を超える場合には注意が必要ですが、眼圧がそれ以下であっても、定期的に検査を行うことを推奨します。
※原発開放隅角緑内障(げんぱつかいほうぐうかくりょくないしょう)とは、房水の流出経路に異常は見られずとも慢性的に房水の流れが悪く、高眼圧状態が続くうちに発症するタイプの緑内障を指します。
参考記事:『緑内障とは|参天製薬株式会社』
参考記事:『原発開放隅角緑内障|池袋サンシャイン通り眼科診療所』
眼圧は変動している?
眼圧は常に一定ではなく、一日を通しても常に上がり下がりを繰り返しています。またこの変動は人それぞれ異なりますが、一般的には夜や寒い季節に高くなることが多いとされています。
もし、緑内障になり、病院へ通って眼圧測定をしても、月に1回程度かもしれません。その眼圧の値は、1日のうちで低い値なのか、高い値なのかはわかりません。眼圧の日内変動、季節変動を考えると、できるだけ多く眼圧を測り、来院する時間を変えて眼圧を測ることが重要です。
参考記事:『眼圧日内変動検査|医療法人圭明会 原眼科病院』
緑内障の検査内容は?
緑内障は眼圧や視野検査などを行い、総合的に進行度合いを判断します。基本的には眼圧や見え方を確認する検査となるため、特別痛みを感じるような内容はありません。ここからは具体的な緑内障検査の方法をご紹介します。
眼圧の測定
眼圧測定では、眼に計測器を直接当てて計測する「接触型」や、空気を用いて測る「非接触型」などの測定方法によって眼圧を計測します。
隅角検査
特別な検査用のコンタクトレンズを使用して隅角の状況を評価します。この隅角の評価は、疾患の診断や、特に高い眼圧の原因を明らかにするため、また病気のタイプを判断する上で必要な検査です。
眼底検査・OCT検査
眼底検査では「視神経の損傷程度」を検証します。緑内障を発症している場合、視神経乳頭のくぼんでいる箇所が拡大していることが確認できます。これを「視神経乳頭陥凹拡大(ししんけいにゅうとうかんおうかくだい)」と言い、周辺の網膜神経線維層に欠損があるかどうか、視神経乳頭に出血が見られるかなどと併せて確認します。
視野検査
視野(見える範囲)を調べる検査です。この検査によって具体的な進行具合を判断します。
参考記事:『緑内障の検査について|つじもと眼科クリニック』
眼圧を下げるための治療方法は?
目薬(点眼薬)を使用した治療
緑内障では、眼圧が高い場合でも、正常値の場合(正常眼圧緑内障)であっても、「眼圧を下げる治療」として、眼圧を低下させる作用のある目薬(点眼薬)による治療が一般的です。特に房水の分泌を抑制する目薬や、房水排出を促進する目薬を点眼することにより、眼圧を下げることが重要です。もともと眼圧が高くない正常眼圧緑内障でも、眼圧を下げることで病状の進行を遅らせることができます。
緑内障の点眼薬については、下記記事もあわせてご覧ください。
レーザー治療や手術による治療
目薬(点眼薬)を使用しても、「眼圧低下が見込めない」「緑内障が進行してしまう」という場合には、手術を含む治療を選択する場合があります。
また具体的な手術方法としては、以下のようなものがあります。
- 房水が排出される部位(線維柱帯)にレーザーを照射を行い、「房水の流出」を改善する治療
- 房水が排出される部位(線維柱帯)を切開することで、房水の排出を改善する手術
- 房水を目の外へ流すバイパス手術(濾過手術)
- 特殊なチューブを使って、房水を目の外に流す「チューブシャント手術」
参考記事:『緑内障とは|参天製薬株式会社』
緑内障治療後の「眼圧の目標値」は?
先述の通り、眼圧の正常値は「10〜21mmHg」と定義されており、理想的な眼圧は人それぞれ異なりますが、治療後の場合であれば「14〜16mmHg以下」を目指して維持します。特に正常眼圧緑内障の場合は、「12mmHg以下」に保つ必要があるため、術後も定期的な眼圧測定や視野検査が重要となります。
また異なる種類の点眼薬を使用しても、眼圧が十分に下がらない場合には、先に紹介したような手術の選択を考慮します。
参考記事:『緑内障とその治療|一般財団法人 太田綜合病院』
目薬(点眼薬)で眼圧が下がらない場合は?
先述の通り、一般的には点眼薬を使用した治療から開始しますが、それでも眼圧が下がらなければ、途中で点眼薬を変更したり、2〜3種類の点眼薬を併用して、目標とする眼圧になるよう調整します。それでも目標値とする眼圧まで下がらない場合には、点眼薬による治療ではなく、眼圧を下げるための手術が必要になります。
また上記のような治療で眼圧が下がると、途中で治療をやめてしまう方もいますが、治療を途中で中断してしまうと、再度眼圧が上昇してしまいます。そのため一時的に眼圧が目標値に到達したとしても、油断せず継続的な治療を続けていくことが大切です。
参考記事:『緑内障治療|くふだ眼科』
緑内障の詳細な治療方法については、下記記事もあわせてご覧ください。
視力を守るためにも、「定期的な眼圧検査」を
緑内障は、長期間の眼圧上昇によって視神経がダメージを受け、徐々に視野が狭まるという病気です。しかし眼圧の高い患者様全員が「緑内障を発症する」というわけではなく、逆に正常眼圧でも緑内障を発症する場合もあります。そのため、「定期的な眼科診療で眼圧のチェックを怠らないこと」、そしてもし緑内障が診断された場合は、「医師の指導のもとで適切な治療を受けること」が重要です。
視力は、一度失ってしまうと取り戻すのは困難です。あなたやあなたのご家族の大切な視力を守るためにも、定期的な眼科検診をお勧めします。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。