アカントアメーバ角膜炎とは|原因や症状、予防方法について解説
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
アカントアメーバ角膜炎とは
アカントアメーバ角膜炎は、アカントアメーバという微生物が引き起こす角膜感染症で、特に近年、感染者数が増加傾向にあります。
アカントアメーバは川や沼をはじめ、ご家庭の洗面所にも生息しているため、感染経路を完全に断つことは困難です。
アカントアメーバ角膜炎は、細菌性角膜炎と症状は似ていますが、感染者の多くはソフトコンタクトレンズを利用していたり、痛みが非常に強いのが特徴的です。
治療には、角膜病巣掻爬(物理的に角膜を削る)、抗真菌薬や消毒薬の点眼など複数の治療方法を組み合わせて行われますが、後遺症が残る場合も多く、完全な治癒は難しいのが現状です。
コンタクトレンズと角膜炎の関係性については、下記記事でより詳しく解説していますので、普段からコンタクトレンズを使用されている方は、こちらもあわせてご覧ください。
そもそもアカントアメーバとは?
アカントアメーバ(Acanthamoeba)はアメーバ型の原生生物の一種で、土壌中、湖、沼、河川などに存在する微生物です。
その他の場所にも広く分布しており、一部の種は感染性を持ち、ヒトや他の動物に対して角膜炎や脳炎(アメーバ性肉芽腫性脳炎)を引き起こす原因とされています。
参考記事:『アカントアメーバ(Wikipedia)』
「アカントアメーバ角膜炎」発症の原因
アカントアメーバ角膜炎の原因は、ソフトコンタクトレンズの不適切使用と深く関連しています。
たとえば、1Day用のコンタクトレンズを一週間使う、コンタクトレンズの洗浄を専用の洗浄液ではなく水道水で行うと、レンズが細菌やアメーバに汚染されてしまうリスクが高くなります。
その他にも、手を洗わずにコンタクトレンズを取り外したり、泥で汚れた手で眼をこすることでも、アメーバが角膜に侵入する原因になるので注意が必要です。
特にコンタクトレンズの洗浄方法については、間違った認識を持っている方が多いです。コンタクトレンズを間違った方法で洗浄してしまうと、かえって感染症のリスクを高めてしまうこともあるので、洗浄の際は必ず正しい洗浄方法をとるようにしましょう。
下記記事ではコンタクトレンズの正しい使用方法について詳しく解説していますので、コンタクトレンズを使用している方は、こちらもあわせてご覧ください!
「アカントアメーバ角膜炎」の症状は?
アカントアメーバが角膜に感染すると、抗体反応を起こし、炎症を起こします。具体的な症状としては、眼に強烈な痛みや赤みが出たり、涙が過剰に出るなどが挙げられます。
さらに、日光や室内灯などの強い光に対して過敏になったり、角膜が白濁して視力が低下することもあり、症状が深刻化するとやがて失明に至る場合もあります。
また先にも解説した通り、アカントアメーバ角膜炎を発症する患者様の多くはソフトコンタクトレンズを使用しています。
病状の悪化を防ぐためにも、ソフトコンタクトレンズ装用者で、これらの症状を感じた際はすぐにでも眼科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
参考記事:『ソフトコンタクトレンズの取り扱いにご注意を!|神奈川県衛生研究所』
「アカントアメーバ角膜炎」の治療方法について
アカントアメーバ角膜炎には特効薬が存在しないため、治療をしても視力が完全に回復しない場合もあり、治療は困難です。
治療方法としては「角膜病巣掻爬」という治療が一般的で、これはアカントアメーバに感染した角膜組織を物理的に除去する治療です。
加えて、抗真菌薬や消毒薬の点眼が行われますが、治療にはかなりの根気を要します。
また、入院治療を行う場合には、長期間の入院が必要となるので、一定期間は休学・休職し、治療に専念せざるを得ない状態となることも念頭に入れておく必要があります。
このように、アカントアメーバ角膜炎の治療は非常に困難とされていますので、何よりも私生活からの予防が重要となります。
参考記事:『アカントアメーバ角膜炎|Myopia Square』
「アカントアメーバ角膜炎」の予防方法
アカントアメーバ角膜炎の原因は、主に「コンタクトレンズの間違った取り扱い」と「汚れた手で眼を触る」ことにあるので、これらに対策を行えば十分に予防可能です。
詳しい予防方法は以下の通り。
- コンタクトレンズを清潔に保つ
- 汚れた手で眼を擦らない
ここからは、それぞれについて、詳しく解説していきます。
予防方法1:コンタクトレンズを清潔に保つ
コンタクトレンズを適切に洗浄し清潔に保てば、アカントアメーバによるレンズの汚染を大きく予防できます。ただし、洗浄の際に水道水を使ってしまうと、水道水にまぎれ混んでいるアカントアメーバを付着させてしまうので、必ず専用の洗浄液を使うようにしましょう。
間違った洗浄方法をとると、かえって感染症のリスクを高めてしまいます。アカントアメーバ角膜炎に限らず、他の感染症のリスクを避けるためにも、コンタクトレンズは常に清潔な状態に保つよう、心がけてください。
予防方法2:汚れた手で眼を擦らない
手に付着した微生物が眼に入ってしまうことも感染経路として挙げられます。
また、たとえ清潔な手であっても、角膜に傷がついてしまうと、コンタクトレンズを経由した感染を起こしてしまうリスクが高まってしまいます。そのため、
- 目を触らない・擦らない
- 目に傷をつけない
これらを前提とした上で、毎日の手洗いなどを徹底するようにしましょう。
治療こそ困難であるものの、予防は十分に可能ですので、適切な予防方法でアカントアメーバ角膜炎の発症リスクを抑えましょう。
治療困難な病状だからこそ、
感染予防と早期受診を心がけましょう
本記事でも解説した通り、アカントアメーバ角膜炎は、ソフトコンタクトレンズや眼を清潔に保つことで十分発症を防げる病気ですが、一度発症して重症化すると、その治療は困難を極めます。
最悪の場合は失明に至ってしまいますので、こうした重大なリスクを避けるためにも、予防の徹底が何よりも大切です。
万が一アカントアメーバ角膜炎を発症してしまった場合、完治には早期受診と早期治療が必須となります。
そのため、痛みや赤みなど、少しでも眼に違和感を感じた際には、すぐに眼科を受診するようにしましょう。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。